2011年5月25日水曜日

インターネットは、あなたを知っている

The New York Times (オリジナル原文はこちら)
By ELI PARISER
掲載日:2011年5月22日

むかしむかし、そして話は進み、我々は放送の社会に住んでいた。ほこりっぽいインターネット前の時代には、広く情報を共有するためのツールは利用されていなかった。当時、大衆と自分の考えを共有するには、印刷機や電波を所有するか、又は持っている人とのつてに頼らなければならなかった。そして、編集者、プロデューサー、メディアモーグルなどのエリート達が、誰が世界を見たり聞いたりすべきかを決め、情報の流れを制御していた。彼らは、いわば門番だった。

そして、インターネットがやってきた。ローコストあるいはコストをかけずに数百万の人々と通信することが可能になった。インターネットに接続すると同時に、誰もが全世界でアイデアを共有することができるようになった。民主化のニュースメディアの新しい時代が幕を開けた。

おそらく、保守系ブロガーのグレン・レイノルズの(ブログ「門番弱体化技術」である)あるいは革新的ブロガーのマルコス・モーリサスの(著書「ゲートクラッシュ」)から、以前に聞いたことがあるかもしれない。媒体の革命的な力についてのすばらしい話で、オンライン政治の早期開業医として、私たちがMoveOn.orgでやったことを記述するためにその話をした。しかし、私は、ますます間違った方向へ向かっていると危惧している 。 それは、おそらく危険な間違いに向かっている。今は、新しい町の門番のグループがあり、以前と違って、門番は彼らは人々ではなく、その人の趣味や習慣を見張っているのである。

今日のインターネットの巨人たちである、グーグル、フェイスブック、ヤフー、そしてマイクロソフトは、この機会を注目し、有用な情報が豊富に手に入ると考えている。もし、彼らがユーザーに合わせ取捨選択されたサービスを提供し、とても個人的関連性が強く魅力的な結果を私たち供給するとしたら、大多数のユーザーと幅広い広告視聴の獲得につながるでしょう。だから、彼らは、我々が見たいと思うインターネットを表示しながら、パーソナライズされたフィルタを提供するために争っているわけである。それらのフィルタというのは、実際、我々の画面に映し出される情報をコントロールしながら、制限もしている。

今では、利用するショッピング用ウェブサイトでも、最近何をクリックしたかによって、それに呼応して表示される、個人的な好みに向けたオンライン広告に、我々も慣れてきている。しかし、我々に見えないように、我々が利用する情報の検索結果も、ますますパーソナライズ化が進んでいる。例えば、グーグルで、ふたりのコンピューターを使って「エジプト」と検索してみて下さい。検索結果は大幅に異なります。それは、グーグルがそれぞれのコンピュータで過去にどのような検索クリックをしたかを記憶し、その趣向に基づいているからである。ヤフーニュース、グーグルニュースのどちらにおいても、個々の閲覧者のために、ホームページへの調整を行っている。そして、ちょうど先月、この技術は、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズといったの新聞のウェブサイトにも進出し始めた。

これらの機能は、消費者向け製品に関する情報が、あなたの個人的な世界へ、又は個人的な世界からフィルタ処理されるときにはほとんど害はなく有効である。しかし、そのパーソナライズが、あなたが何を買っているかだけではなく、あなたがどのように考えるかに対して影響を与えるとしたら、別の問題が発生する。民主主義は、複数の視点を駆使する市民の能力にかかっているが、インターネットがもし既に確立された視点を反映する情報しか提供しないとしたら、あなたのコンピューターで表示される内容範囲が制限されるわけである。あなただけが見たいと思うものだけを見ることは便利だが、あなたが見たくないものを見ることも時には重要である。

古い門番と同様に、新しい門番フィルターを作成するエンジニアたちが、我々が世界について何を知るかを決定する上で、巨大な力を持っているのである。しかし、大半の古い門番とは違い、新しい門番たちは彼らを国民の信頼の守護者だとは考えていません。ジャーナリズム倫理に相当するアルゴリズムもありません。

Mark Zuckerberg、フェイスブックのCEOが同僚に言ったことがある。「アフリカで死んだ人よりも、あなたの庭で死んだリスの方が今のあなたにとっては大事かもしれない。」Facebookでは、「関連性」がユーザーに何を見せるかを決定する唯一の基準なのである。リスのような最も個人的に関連するニュースに焦点を当てることが、これは大きななビジネス戦略である。しかし、その理論で行くと、我々に与えられるのは、苦しみを描いた大量虐殺や革命についての読み物ではなく、表の庭を眺めなのである。

我々は、門番の古いシステムに戻れるはずもなく、戻るべきではない。しかし、もしそのアルゴリズムに編集機能があり、我々に見せるものを決定するのであれば、我々は、その狭い「関連性」だけでなく、変化球を重要視するかどうかを確認しなければならない。アップルやカニエ・ウエストと同じように、アフガニスタンやリビアも私たちに表示する必要があるからである。

これらのアルゴリズムを利用する企業は、デートをするよりもはるかに真剣に、この治療対応の責任を取らなければならない。自分たちが何を見るのかを、私たちに制御させる必要がある。彼らがパーソナライズしている場合にはそれを明らかにし、自分たちが独自のフィルタを形成し調整できるようにすること。我々市民も、アルゴリズムのようなツールを使用するならば、それに必要とされる"フィルタリテラシー"を開発することと、たとえ私たちが快適でなくても私たちの視野を広げるコンテンツを要求することを、自分サイドで支持していく必要がある。

インターネットが革命的な結合媒体としての能力に恥じない機能を果たすことは、守られるべき私たち集団の利益である。私たちがいつもの自身の個人オンラインの世界に閉ざされていては、何も変わらない。

(Eli Pariserは、MoveOn.orgの取締役社長であり、「The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding From You. (フィルタバブル:インターネットがあなたから隠しているもの)」の著者で​​ある。)

(終)

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