2011年8月3日水曜日

日本じゃないの?旅行者たちは、安売りとリスクを考える

The New York Times 英語原文はこちら
By KEN BELSON
2011729

311日に日本の東北地方を襲った地震と津波は、原発の危機がそれに続き、おそらく経済の隅々まで影響を与えているが、直接的に影響を最も受けているのは観光産業である。外国人観光客の数は、これらのトリプル災害以来、50%に急落している。日本政府観光局の発表である。

しかし、4ヵ月で、旅行者は徐々に戻りつつある。ほとんどは、ビジネス旅行者、冒険を求める人やバーゲンハンターで、寿司の夕食で週の貯蓄を使い果たせる日本とはあまり縁のない訪問者たちである。

高価な遊び場としての日本を見ていたので、エリン・コンロイさんとジェニー・マクミーンズさん、ニューヨーク出身の友人同士は、日本への旅行をためらっていた。しかし、この春、彼らはairfarewatchdog.comで、東京までの往復チケットをわずか600ドルで見つけ、それは通常料金の半額で、そして1泊あたり2600円(1ドル=79円計算で約33ドル)でホステルの部屋を予約した。突然、日本が手頃な価格になり、対ドルでも過去最高に近い円高となった。

「我々にとって、いろんな意味で、東京は雲の上の旅行先のひとつだった。」コンロイさんは言う。彼女は、先日の土曜日、世界最大の卸売魚市場のある築地辺りをマクミーンズさんと歩いていた。

放射線の危険性はどうでしたか?コンロイさんとマクミーンズさんは、旅行勧告資料を熟読し、高レベルの放射能にさらされるようなことはないと確信していたと言った。「私の両親は、私たちよりももっと心配していた。」コンロイさんは言う。

旅行者たちは、日本を訪れる安全性をさまざまな方法を使って調べているようである。日本に住んでいる外国人や、日本へ頻繁に旅行する人によって書かれた記事が載っているブログを当てにしている人もいる。コンロイさんやマクミーンズさんのように、政府の勧告に頼っている人が多い。アメリカ国務省の発表は、「福島第一原発の状況は、まだ深刻で、動的な状態のままであるが、福島第一原発の50マイル(80km)の半径の外側では、健康と安全のリスクは低い。」英国では、外務省が、地震と津波に見舞わた東北地方と、福島の原子炉の37マイル(60km)以内には旅行しないよう勧告している。しかし、「これらの特定の領域外の日本の状況は、ほとんど正常に戻り、訪問してもトラブルはない。」とも事務局は話している。

リスクが本当に甚大であれば、政府は日本へ旅行しないように勧告するであろうが、今回は今のところそうではない、と話す旅行者たちもいる。「私は、日本人が今回の災害で弱音を吐かないので、私自身の宿題をしなければならないように感じた。」ジャック・Jaffeさんは言う。彼は、先月、ロサンゼルスから出張で東京を訪れた。日系のエレクトロニクス企業に勤務している。「しかし、私は英国と米国を確認した。両国のウェブサイトは、本質的に同じことを言っていた。原子炉の近くの区域以外は、大丈夫である。」

それでも、危機に対する日本政府の対応については疑わしいままで、土壌や水の放射線レベルを監視する能力も同様である。政府は、牛乳やいくつかの野菜の販売自粛の多くを解除したが、静岡県では、放射線の異常なレベルが栽培された緑茶に発見され、一部の汚染された牛肉は最近、その販売ルートであるレストランやショップで発見されている。しかし、概して、これらは孤立した事象として見られている。日本の食料と水の安全性のファクトシートでは、東京のアメリカ大使館が、「日本政府は、食品や水の供給に対する安全性を確保するための適切な措置を取っている。」と言っている。

疑問はあるが、訪問するかどうか決定は、世界の他の国々が日本をどう見ているかという委任状のようなものにかかっている。一部の自称訪問者にとって、割引航空運賃の保証があったとしても、今、日本を訪問させるには説得力がなかった。

「我々は、ここ2週間で、2回の余震があったばかりで、それとほとんど同時に、訪問しても安全かどうか尋ねるクライアントからEメールが入る。」ダニエル・サイモンは言う。彼は、フォーシーズンズホテル丸の内東京のゼネラルマネージャーで、同ホテルの予約は50パーセント減っている。サイモン氏は、東京には、世界で最も耐震性の高い建物があり、福島市の原子炉からは遠く離れていることを顧客に伝えていると言った。しかし、「メディアでは、日本に関する否定的なニュースがまだまだあるので、ハイエンドのレジャー旅行者は、2012年の中国の旧正月まで戻ってこないと思っている。」

心配は広がり、大阪の関西空港の到着便は、5月に47%減少した。関西空港は福島から360マイル(580km)の距離である。「私は、放射線は大丈夫か、と6回も聞かれた。」エド・コーンハウザーさんは言う。5月から、大阪から沖縄に旅行しているサンディエゴ出身のピアニストである。「ホステルの所有者の多くは、観光は落ち込んでいる、私に言う。外国人が来てくれない理由を知りたがっている。」

コーンハウザーさんは、福島からは遠いとわかっているから、日本に来るのは大丈夫だと感じた、と言う。友人たちの心配にもかかわらず、彼は、国務省のウェブサイトを読んで安心した。「あの地震の後だし、私はまた来るとは思わなかった。」と彼は言う。「友人たちは、大げさに反応した。かなり、大きな国だ。」

しかし、放射線に関しては、自信が揺らぐこともある。東京の、ホテルオークラ、帝国ホテルのようなハイエンドホテルを含めて、ホテルらは、最大50%の割引を打ち出し、旅行者を呼び寄せようとしている。こういった措置はツアーにも及び、香港や他のアジアの場所への旅行者を引き戻すのに役立っている。「今は混雑していないし、パッケージツアーの価格は20から50%ダウンしている。」ヒラタマサキさんは言う。日本観光公社のマーケティングプロモーション理事である。

ホテル経営者には、直接、彼らの宿泊施設がトラブルからはるかに離れたところにあると、お客様に安心してもらおうとする人もいる。ミナトキサブロウさんは、東京での貴美旅館を営業している。最近、旅館のウェブサイト上で、「福島での緊急事態は、外国のマスコミに誇張されています。」原子炉に近いエリアを除き「生活は平常通りです。」と載せた。

確かに、東京では然程の変化はなかった。ただ、少しエアコンの温度設定を上げることを含めた省エネ対策を除いては。仙台、地震の震源地に最も近い大都市でも、繁華街のレストラン、ホテル、商店は営業している。津波の影響がわかるのは、太平洋の数マイル以内の近隣エリアに行くときだけである。

それでも、多くの観光客は慎重すぎるくらいの方がまだいい、とエリー・コリンさんは言う。彼女は、ニューヨークでオベーショントラベルグループで働き、企業やレジャー旅行を扱う。あるクライアントは、62,000ドルの旅行をキャンセルした、彼女は言う。

「記事見出しは本当に見通しが暗く、毎日毎日、ますます神経質になっていった。」コリンさんは言った。彼女は、地震以来、日本への観光ツアーの手配をしていない。「私の感じでは、日本からの何か本当に良いPRがないと、観光旅行者が戻ってくるには来年までかかるのではないでしょうか。」
(終)

0 件のコメント:

コメントを投稿