2011年3月31日木曜日

「開催危機にさらされる」メトロポリタンオペラ日本公演

The New York Times (オリジナル原文はこちら)
By ROBIN POGREBIN
公開日:2011年3月30日


メトロポリタンオペラ(ニューヨーク)は、6月に予定する日本ツアーを実施するかどうかを議論を続けている。そのツアーは数年間に渡り計画され、2006年以来の来日となるかなり大がかりなものである。

ピーターゲルブは、メトロポリタンオペラのゼネラルマネージャーで、火曜日に安全性の懸念について労働組合の代表者との会い、水曜日には会社全体に対して方針を発表し、「この時点では危険にさらされている。」ツアーについて説明を行った。

ゲルブ氏は「先遣隊が、5月の中旬に出発する前には」原子炉での問題によるすべての危険性を十分に検討されるだろうと述べた。

3週間のツアーは、6月4日の名古屋愛知芸術文化センターで幕を開けることになっている。これは7度目の来日ツアーであり、ほぼ東京のジャパンアーツコーポレーションが主催している。「私たちは、この状況が改善され予定通りツアーを行うことができることを期待していると伝えている。」 ゲルブ氏はこのツアーの契約を結んでいるジャパンアーツについて語った。

バイオリニストの、アンネ=ゾフィームターとアメリカンバレエシアターは、ジャパンアーツが主催する今後数ヶ月間に渡って日本で開催されるイベントへの出演が予定されている。ロックアーティストのスラッシュ(以前のガンズアンドローゼズ)は、3月11日の地震の直後に大阪で公演を行ったが、東京と横浜での3公演をキャンセルすることを余儀なくされた。

ゲルブ氏は方針の中で、「良くも悪くも」今後の状況が変わる可能性があるため、来日ツアーを催行するかどうかをツアーの出発の8週間前の現時点で判断するのは、時期尚早だろうと言っている。「もしアメリカ国務省がその時点で、日本への旅行に対して注意喚起を警告し続けていた場合には、私たちはもちろんツアーをキャンセルする」と彼は言った。

水曜日の国務省の旅行勧告では、「日本への旅行は当面延期することと、日本国内の米国市民は出国を考慮する必要があることを、強く求めている。」

アラン・ゴードンは、音楽アーティストのアメリカの同業組合全国理事で、オペラ会社の多くを主催している。「歌手たちは日本へ出かけることと、家族を連れて行くことを心配している。我々は、時間をかけて、何が起こるかを見極める必要がある。ただ個人的に行くことができないと決定する人も出てくるであろうと予想している。」

マービスマーティンは、コーラスでソプラノを担当する。インタビューの中で、彼女はこのツアーのために危険にさらされる人がたくさんいると思ったことを語った。 「まだ少し時間がある」と、彼女は言う。「この注意勧告が出発ぎりぎりまで続き、日本側からこのツアーがキャンセルされるのを期待している。そうすれば私たちはキャンセルを決断する必要がなくなる。私は健康を危険にさらしたくないし、心の叫びは『ごめんなさい。行けない。』と言っている。しかし現時点では、メットが考えているように出発することになりそう。」

メットの音楽監督は、ジェイムズ・レヴァインで、3つのフルステージの公演のうちの2つを指揮することになっている。プッチーニの「ボエーム」、ヴェルディの「ドンカルロ」の2演目だ。ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」はジャナンドレア・ノセダが指揮する。メットの広報担当者は、レヴァイン氏はツアーについて話はできないと言ったが、彼のマネージャーであるロナルド・ウィルフォードによると、「レヴァイン氏はメットの決定に従う。メットが日本に行くことができて危険性はないを考えるなら、彼は行くと思う。私はそれについて彼と話をしていないし、私は話をするつもりはない。」

メットは、このツアーがキャンセルされた場合、経済的にどれだけ問題になるか明らかにしなかった。 このツアーは、2009年11月に発表、全13公演が予定され、ソロ歌手、オーケストラ、合唱、バレエ、管理および技術スタッフを含め350名以上のスタッフが関わっている。 予定されているスター歌手は、 Ildar Abdrazakov, Piotr Beczala, Olga Borodina, Joseph Calleja, Diana Damrau, Barbara Frittoli, Dmitri Hvorostovsky, Jonas Kaufmann, Mariusz Kwiecien, Zeljko Lucic, Anna Netrebko, René Pape そして Susanna Phillipsらである。

名古屋での公演の後、ツアーは文化会館とNHKホールでの公演のため東京に移動することになっている。コンサートホールは、原子炉が地震で被害を受けた福島第一原発から約170マイル(約270km)である。

メット初の日本でのツアーは1975年、直近の来日は2006年だった。ツアーのリードスポンサーはKDDI株式会社で、日本に拠点を置く通信会社である。このシリーズが2006年に始まって以来、映画館でのメットのライブパフォーマンスのメットの上映は、日本では定期的に行われている。

ニューヨーク日本総領事館の広報担当者である、カワグチナオコさんは、文化的な団体が日本への訪問をキャンセルするとは思いもよらなかったと言っている。原子炉から離れた地域は安全で彼女は言う。「東京での暮らしは以前のままだ。」

ケリー・ライアンさんはアメリカンバレエシアターのための広報担当者で、7月に東京で公演予定となっている。彼女は言うには、当団体は状況を静観している。「どちらにしても、現時点では、意思決定するには時期尚早だと感じている。」と彼女は言った。

ジャパンアーツは、日本でのツアー主催者だが、コメントは得られていない。しかし、そのウェブサイトでは、世界有数のオーケストラ、オペラ団体やダンスカンパニーを日本へ呼び寄せるのは、「真の芸術の力を体験することで人間が人生の至福を与えられるという信念に基づいている。」と書かれている。

ギタリストのスラッシュは、3月の大阪でのコンサートの後すぐに日本を去ったが、コンサートの直後のツイッターで綴っている。「今夜はすばらしい大阪でのライブだった。起こった災害にもかかわらず、観客はすごい気迫だった。」
(終)

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