The New York Times (オリジナル原文はこちら)
By CHRISTOPHER CLAREY
2011年6月22日
発信地:ウィンブルドン、イギリス
それはまるで 時間が止まっていたかのようだった。ポリエステルのガットと電子制御の線審ではなかった時代、オールイングランドクラブの関係者たちが彼らの神聖なセンターコートを屋根で覆う計画を、まだばかにしていた頃である。
しかし、もしセンターコートに、その屋根がなかったら、この水曜日の午後の、伊達公子-クルムのすばらしさや、彼女の古風なゲーム運びと多様なスキルに驚きそしてあえぐことも、そして、9月に41歳になる女性とは思えないほど各コーナーへグランドストロークを打ち込み全身を伸ばしてボレーポイントをたたき出す姿に驚嘆することは、できなかったかもしれないのだ。
伊達クルムが、前回、この最も象徴的なテニスコートでプレイしたのは15年前だが、彼女は今回の3時間近くの第2回戦の試合で、そんなブランクを吹き飛ばしてしまった。唯一欠けていたものは、大番狂わせだった。彼女は最後の最後でたじろぎ、ヴィーナス・ウィリアムズが6-7(6-8)、6-3、8-6で、最終的に勝った。
ウィンブルドンで5回、シングルスのチャンピオンとなっているウィリアムズは、股関節屈筋の負傷で約5ヶ月行方不明の後、今年の試合に急に戻ってきた。彼女は、つい先週のイーストボーンの試合から戻り、ルーマニアのモニカ・ニクレスクまたはスペインのマリア・ホセ・マルティネス・サンチェスの勝者と対戦するオールイングランドクラブの第3回戦に向かう。
明らかなのは、彼女が伊達クルムのような相手には、もうぶつからないことである。伊達クルムは、器用で小柄な日本のスター選手で、水曜日の長い試合では、彼女のフラットなフォアハンド、タッチボレー、そして戦術的な揺さぶりで、ウィリアムズをふらふらにさせた。
伊達クルムがウィンブルドンで初めてプレーしたのは1989年、今年のウィンブルドン女子参加選手のうち36人はまだ生まれていなかった時である。伊達クルムが前回、センターコートでプレーしたのは1996年で、シュテフィ・グラフに準決勝で敗れた時である。ツアーと注目に疲れ、彼女はその後、長い間ゲームから遠ざかった。彼女の30代後半に向けて、スポーツへの情熱を再発見するためだけに。
その情熱は、水曜日の最初のポイントから伝わってきた。彼女は若者のように芝生を走り回った。伊達クルムは、ウィリアムズからまず第1セットを奪い、第2セットも3-0までリードしたが、5-1と劣勢となり、その後ウィリアムズが試合を引き寄せ始めた。しかし、のしかかるプレッシャーにもかかわらず、伊達クルムはくじけずに、第3セットでも力強いショットでウィリアムズをプッシュし続けたが、最終ゲームは4つの凡ミスを重ねるよろめくゲームとなってしまった。
(終)
追伸:オリジナル原文の記事写真では、伊達さんのそれでもまだ悔しそうな表情が伺えるのがうれしい。
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