The New York Times (オリジナル原文はこちら)
By KEN BELSON
掲載日:2011年6月27日
発信地:東京
福島で、困難な原子炉をなんとかして冷却しようと、骨を折って働いている何千人もの人々が従事している仕事は、日本人が考える、汚い、きつい、そして危険なものである。
ところが、ヤマダヤステルさん、72歳は、その仕事に参加したいと熱望する。テレビで、第一発電所における損傷を制御するために、数百人の若い男性たちが奮闘しているのを見て、ヤマダさんはあるアイデアを思いついた。それは、制御困難な原子炉を飼いならすために、高齢のエンジニアや他の専門家を募集することである。
彼らは、必要なスキルをいくつか持っているだけでなく、高齢なので、高レベルの放射能被ばくの結果で、ゆっくりと進行する癌や他の病気にかかる危険性が低いからである。志願する彼らは、子供ができなくなる、またはもっと悪いケースの可能性の危険から、若い日本人たちを救うであろう。
「我々は、この事故を食い止めなければならない。そのためには、誰かが作業を行う必要がある。」ヤマダさんは言う。彼は、住友金属工業で働き、退職したプラントエンジニアだった。「我々は、そこで働いてもダメージが少なくて済むので、高齢世代が仕事を引き受ければ、社会に利益をもたらすだろう。」
壊滅的な地震と津波が発生した数週間後、彼とシオタニノブヒトさん、彼もまたエンジニアであり子供の頃の友人であるが、4月初めに、熟練したベテラン軍団を結成した。彼らは、数千の電子メールや手紙を配信し、さらにTwitterのアカウントを設定した。彼のブログでは(bouhatsusoshi.jp/english)、ヤマダさんは、「このフロントライン作業負担に耐えうる物理的な強さと経験を」持っている60歳以上の人々に呼びかけている。
反応は速かった。約400人が志願してきており、歌手、料理人、82歳の男性もいる。約1,200人は、支援を提供してきた。寄付金は430万円(54,000ドル)を突破している。彼のブログは12の言語に翻訳されている。
ヤマダさんは、優しい話し方の、癌を克服した経験のある方だが、今回は簡単な目標から始めた。しかし、この動きは、原子炉を所有する東京電力にとっては労働者のやりくりがますます困難となることが予想され、志願活動の意義と立ちはだかる現実における、日本の高齢者の役割についてより広い議論を広げる引き金となった。専門家には、対応を支援する労働者を、日本が最終的に輸入することを考える人もいる。3,000人以上の労働者、パートタイマーの多くが、第一発電所で働いている。すでに、熱中症に苦しんでいる人もあり、9名は、法定限度を超えて放射線を浴びている。数十名の労働者は、出勤を取り止めている。
ヤマダさんと彼のグループは、自分たちのことを、より良く役立つことをあきらめた無私の愛国者、愚かにも危険の最中に喜んで自分自身投じようとする変人、または時間を持て余している年金受給者だと表現する。この説明は、ポイントを押さえていない。シオタニさんは言う。彼は、より実用的なアイデアを考えていた。
「原子力発電所は、科学者やエンジニアの発案によるものである。」と、彼は言う。「彼らがこの混乱を招き、そして、彼らが、立て直さなくてはならない。」
この危険な状態では、支援したいことと、許可されていることは、異なるものである。議員たちは、当初、志願者らをばかにした。菅直人内閣総理大臣の側近である細野補佐官をはじめ、先月、記者団に対し、福島での作業において「自殺の軍団」はまだ必要ないと言っていた。
しかし、「彼らが、この状況を解決するために、自分たちの生活を犠牲にして、志願することは非常に貴重である。」細野氏は、後になって、こう説明した。「彼らは、ある程度の年齢にあり、フルフェイスマスクでそのような危険な環境で作業したことで、後で病気になってもらっては困る。」
しかし、良い気分にさせるストーリーに飢えているこの国では、熟練したベテラン部隊の話は、多くの人々の心を掴んでいる。インタビューのための要求は、世界中から注がれている。政治家らも徐々に乗り気になってきた。6月6日、ヤマダ氏は海江田経済産業大臣に会い、大臣は、「皆さんの熱意が冷める前に」志願者グループを支援すると約束した。
「私は、なんと大胆な発想だと思いました。多くの日本人や外国人が福島に行くことを恐れているこの時に。」牧山ひろえ議員は言う。彼女は、プロジェクトを推進支援している民主党参議院議員である。「誰もそこで死ぬつもりはありません。「彼らは、本当はしたくないんです。でも、これを行う必要があると感じているんです。」
ヤマダさんは、自宅で仕事をするのが忙しくなったので、東京の新橋地区で、狭いエレベーターのないのオフィススペースを、いくつか見つけた。複数のコンピュータと質素な部屋、お湯用ポットと折りたたみ椅子が数台、ヤマダさんと彼のチームは、非営利団体になるための申請をし、7月に第一発電所を訪問する申請書の承認を待っている。
ヤマダさんとシオタニさんは、言う。彼らの仕事で最も困難なのは、東京電力の職員とやり取りをすることではないだろうか。エンジニアとしての2人は、相手を理解している。相手は、間違いなく大変忙しく、おそらく自尊心を傷つけられ、この規模の被害と、会社が転落する状況を蒙っている。
しかし、高賃金のコンサルタントや取引会社とは異なり、熟練したベテラン軍団は、アイデアやハードワークを除いて、何の利害関係もない。志願者として、彼らは利益相反なく、率直に話すことができる、と彼らは言う。それでも、ヤマダさんとシオタニさんは、謙虚でなければならないと認識している。ヒトツギヨシミ氏、東京電力の広報担当者は、会社は、援助の申し出を「高く評価」しているが、まだ志願者の皆さんに何ができるか、そして、どのように彼らの安全を確保するかについては、検討中である、と話す。
ヤマダさんは、熱心なサイクリストである。夏の間は暑さと湿度が強烈なので、秋まで、第一原発での作業は始めたくはない、と言う。どんなときも、エンジニアは、高齢労働者だからではなく、急いて事を行うべきではない。
「私たちは、決して、無謀な行動や、無意味な行動は取らない。」と、ヤマダさんは言う。「我々は、無益な作業を行うことはない。」
(カミイズミヤスコ、記事寄稿)
(終)
ついさっきこのニュースを知りました。翻訳を日本語話者に提供されたことに敬意を表します。
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